フードカルチャーの次代をウォッチ!する先端ウェブマガジン

フードカルチャーの次代をウォッチ!する先端ウェブマガジン FLAVO

今週のこの人・この店・このグルメ! フードスマイルガールズの流行発信 郷土料理で世界一周
ショク(食&職)を極める! 仲間と歩む、独立の形 のせ弁 転職の作法





「下町ブラスリーANZIM」
丸山剛さん

【 2009/05/21 】 

「洋食」と「酒場」の掛け合わせ――。東京・日本橋に開店した「下町ブラスリーANZIM」はありそうでなかったコンセプトを持つ。オーナーの丸山剛さん(49歳)は、料理人から一時、サラリーマンとなるも、飲食店で独立したいという希望は長年、持ち続けてきた。

「下町ブラスリー ANZIM (アンジン)」(日本橋)

壁に貼られたメニュー

「下町ブラスリー ANZIM (アンジン)」(日本橋)

席数は28席

「下町ブラスリー ANZIM (アンジン)」(日本橋)

冷凍庫にはグラスがずらり

「下町ブラスリー ANZIM (アンジン)」(日本橋)

樽冷式のサーバー


店舗データ
下町ブラスリー ANZIM
住所:東京都中央区日本橋室町1-11-13
住所:大西ビルB1階
TEL:03-3271-5200
定休日:日曜


■ 江戸から栄える日本橋室町

中央区日本橋室町――。江戸から栄える街のシンボルは、日本橋三越本店や外資系高級ホテル「マンダリンオリエンタル」が入る日本橋三井タワーといった巨大な建物である。しかし、それらの立つ中央通り西側の“向い側”にある数多の小さな路地も、この街のもう1つの象徴だ。というのも狭い通り沿いに思わず気になる小さな飲食店が多く立ち並び、このエリア一帯がちょっとした飲食街となっているのである。ゴールデンウィーク明けの5月8日、このエリアに個性の強い1店が新たに開店している。「下町ブラスリー ANZIM(アンジン) 洋食酒場」がそれだ。

■ 洋食がコンセプトの中心

コンセプトの中心にあるのが「洋食」と「酒場」。オーナーの丸山剛さん(49歳)は言う。「独立して店を出すのが数年前だったら、きちんとしたレストランを出していました。こういう厳しい経済状況になって考えたのが、ランチタイムは食事ができて、夜は“酒場”になるこの店でした」。まずはランチ。メニューは「ビーフカツレツ定食」(1000円)のみ。カツオ節から出汁をとった味噌汁と店内で精米した米を炊いたご飯が1回ずつおかわり可能なランチは初日から36人の来店があり、開店1週間ほどで60人にまで増えるなど反応は上々の様子。夜は「洋食酒場」になる。メニューは常時約30種類ほど揃い、「自家製スモーク盛り合わせ」(600円)、「チョリソー」(400円)、「メンチカツ」(650円)など抑え目な価格が目を惹く。メニューは頻繁に入れ替わり、2日同じメニューだったことはまだない。仕込んだ分がなくなれば定番以外は別のメニューを仕込むことが多い。丸山さんは同じ客が週に2、3回は来たい店にしたいのだ。

■ 酒場ならではの酒へのこだわり

丸山さんによれば、「酒場」とは「大人がくる店」で、“子供”もこれる「居酒屋」とは違うという。抽象的ではあるが、なんとなくわかる気もする。酒場だけに、出す酒に対するこだわりは強い。厨房内にある大型冷凍庫の左側のトビラを開けるとグラスやジョッキ、冷やすと美味しい酒類がビッシリ。知人が扱うドイツ製ビールグラスで美味いビールを飲んで欲しい、キンキンに冷やしたジョッキでホッピーやハイボールを楽しんでもらいたい、そんな思いが文字通りそこに「詰まって」いた。美味しいビールに対する丸山さんの熱意は、「樽冷式」のビールサーバーにも現れている。厨房のなかに設置されたビール樽そのものを冷蔵庫のなかで冷やしているタイプの樽冷式を見せてもらうと、確かに通常のビールサーバーよりもこちらのほうがうまそうだと感じた。厨房機器のレイアウトも樽冷式ビールサーバーを入れることを考慮しながら行ったというから恐れ入る。

■ 長年消えなかった希望

丸山さんは高校を卒業後、18歳で都内のフランス料理店で働き始めた。ステーキレストランなどに移るなどしながら約8年間、料理人として働いた後、イタリアンレストランで責任者として7年間勤めたが、腰痛がひどくなり、やむなくサラリーマンに転職。業務用コーヒーマシンメーカー大手で働きはじめると、飲食店で働いた経験などが生き、東京支店長、営業課長なども務めるまでになった。上司に誘われ、別の大手メーカーの日本支社立ち上げなどにも携わっていたが、独立して飲食店をやりたいという希望はいっこうに消えなかった。16年のブランクを経て、再び飲食業界に戻り、店を開いたのは49歳である。
今から48年前の昭和36年に立てられたビルの地下一階に見つけた20坪の物件は、以前、倉庫として使われていた。不況の影響もあり、家賃は「格安」といえる金額だった。不動産店で紹介してもらった内装業者などに依頼し、28席の酒場を作り上げた。独立資金は、自己資金のほか、東京都や中央区の創業支援関連の制度を利用して融資を受けて準備した。

■ 最後にすべて自分にかえってくること

丸山さんは毎朝9時には家を出る。店につくのは9時半で、そのまま終電まで働く。「おいしいものを安く提供したい、そのためには手間をかけるしかない」のである。確かに手間がかかっている。洋食と言っても、「酒に合う洋食」にしたいので、たとえばメンチカツはソースではなく、仕込んだデミグラスソースをかけて出している。ソースは酒に合わないと考えているのでテーブルには置かれていない。そのような手間をかけたものがリーズナブルなのだから驚かされる。実際、驚く客もいて、お会計をした男性2人客が金額を伝えられ、「注文したものが入っていないのではないか、間違えているのではないか」と言ったこともあるという。
独立してよかったことは、「最後にすべて自分にかえってくること」(丸山さん)。また、飲食店のよさをきくと、「上司や社内に目を向ける必要がなくて、お金を払っていただけるお客様だけをみていればいいこと」と返ってきた。
取材をさせてもらったのは、夜の営業がない土曜日の夕方だった。燻製など、翌週のための仕込みはまだ終わらない様子だった。


BACK NUMBER
『そば処 出羽香庵』(東京・霞ヶ関) 鏡弘道さん 【 2009/09/03 】
『食愉旬感 HAYASHIYA 〜晴レ時々咲ク〜』(東京・阿佐ヶ谷) 林 和貴さん 【 2009/08/06 】
「下町ブラスリーANZIM」 丸山剛さん 【 2009/05/21 】
「鮨 なが井」永井大輔さん 【 2009/04/16 】
和酒バー「庫裏(くり)」 栗原広信さん 【 2009/03/26 】


転職、一歩、前へ。フードスマイルネットワークが提供する
フード業界専門・人材紹介サービス


「FLAVO」の取材をご希望の方はinfo@f-s-net.co.jpまでご連絡ください。
掲載費は無料です。ただし、コラムとの整合性等がございますので、お受けできない場合がございます。ご了承ください。