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■ 昭和8年開業の酒店
酒販店「でぐちや」が中目黒に開店したのはいまから70年以上も前の昭和8年。永く中目黒住民に親しまれてきた老舗酒屋が2006年の師走、8年ぶりの店内改装を期に店内に“スタンディングバー”を併設させた。店名は「でぐちや」からとった「BAR EXIT(出口)」。酒店のレジ横に新しく設置されたカウンター上にはワインボトルが並び、カウンター横のショーケース内にはワインに合うチーズが数種類陳列されている。間仕切りで仕切られた一角には3つのテーブルが並び、壁に陳列されたワインや食に関する書籍や雑誌を眺めながらグラスワインを楽しめるスペースになっている。酒店併設のスタンディングバーとして誕生した同店のこだわりはワイン。月に2回ぶどう品種や生産地、生産者などのテーマを設定して6種類ほどワインを選び、一杯600円から1000円ほどでグラス提供する。1月はスパークリングワインのほか、南フランスのコート・デュ・ローヌのワインが白2種類、赤3種類並ぶ。「でぐちや」三代目の株式会社出口屋社長の鳥海武俊さんにバーを開店させた背景を聞くと、「お酒の楽しみを伝えていくことに重きを置き、ワインやチーズをお客様にお気軽に楽しんでいただくためのバースペースを併設いたしました。自分の感銘したワインを実際に飲んでもらうことによって、それがどうして美味しいのかを丁寧に説明して販売していきたい」と説明する。
■濃いワインだけじゃない
2006年9月の規制緩和によって酒販免許は条件さえ揃えば、これまでよりさらに容易に取得しやすくなった。2007年には多くの酒販免許が交付され、2008年にはほとんどのコンビニなどで今まで以上に酒を購入できる店が増えるという。
「でぐちや」は差別化の一手段としてこれまで、ワインや地酒、焼酎など、生産者と直接コミュニケーションを図り、生産者の酒造りにかける思いやこだわりを理解した上でセレクトしたこだわりの酒を多く取り扱ってきた。特にワインの取り扱いは多く、8年ほど前からはより多くの人にワインの楽しみ方を伝える目的でワインの試飲会を月1回のペースで開催してきた。今回の改装にあたり、ワインが楽しめるスタンディングバーを併設しようと思い立ったきっかけは、この試飲会を開くなかで鳥海さんの心の中に、あるもどかしさが生まれたからであった。
■一本通して楽しめるワイン
試飲会は、18種類のワインを一度に楽しむコースと、特別なワインを6種類ほど味わうコースを二種類、用意している。会を始めた当初は、なかなか参加者が集まらないこともあったものの、試行錯誤してテーマを決め、告知していった結果、徐々にワイン好きの客やワインをもっと知りたいという客が集ってくるようになった。このなかで徐々にある想いを抱くようになっていく。「試飲会では、様々なタイプのワインを楽しんでいただきますが、多くの試飲をすると濃いワインに人気が集まってしまう傾向があります。
私たちがセレクトしてお客様に提案したいワインは、グラス一杯というよりもボトル一本を最後までおいしく楽しんでいただけるワインなんです」。ボトル一本を最後まで美味しく味わえるワイン。鳥海さんが参加する直輸入グループのワインは、例え1本飲んだとしても飲み飽きのしないピュアな味わいの自然派の造りをしており、「感動するワインに出会った」という。
「試飲会というかたちとは別に、気軽にワインを楽しんでもらえる場を作れば、自分たちがセレクトしたワインをよさがもっと伝わるのではないか」。鳥海さんの頭の中に徐々にそんな想いが募るようになった。外食業界のトレンドの一つにもなっているスタンディングバーを見て回り、そうして「BAR EXIT」の企画が練りあがっていった。
■酒屋のイメージも変えた
今回の改装にあたり、スタンディングバーとともにこだわったのが酒店に置かれたワインセラー。PSというシステムのセラーは、ファンで涼しい風を送って冷やす通常のタイプとは異なる無風状態で温度や湿度を維持するもの。「大切なワインを少しでもよい環境に置いておきたい」との思いから導入した。
同店の地下の倉庫には温度15度、湿度70%に保たれた10坪ほどのワインセラーもあったが、より美味しいワインを提供するためにより保存法にもこだわろうと、今回新たなセラーを設置した。また、店内のイメージづくりにもこだわった。
「いままでの男っぽい雰囲気を変えたい」と考えていた鳥海さんは、自分の好みにあった空間を設計していたデザイナーを紹介してもらい、シックで落ち着ける空間を作り出した。同時に酒店の「でぐちや」のロゴも作成。ローマ字で「Deguchiya」にすることだけデザイナーに伝え、多くのの案を出してもらうなかで、最も輝いていた現在の筆文字の案を採用した。同時に併設のバーのロゴも作成。本来なら非常口に走りこむはずのヒトが「グラスを持って駆け出したくなるようなおいしいワイン」をイメージしたロゴが誕生した。
■ 情報発信店に
バーが開店したのは12月20日。まだ、オープンして間もないため客足はこれから。ただし、店内改装後は、酒店の売上は好調だという。「基本的には地元のお客様に支えられてきた酒屋ですが、ずっとそれだけではいけない。『BAR EXIT』は中目黒駅から7、8分歩いたところにありますから、気軽にきていただくというのも難しいかもしれませんが、面白そうだからちょっとのぞいてみようかという店作りを今後していこうと思っていますよ。いま女性スタッフが4人いますが、いろいろ提案を出してもらっているところですから、方向性を模索しながら、いい方向にもっていければと考えています。フランスでは、日本とは生活パターンが違うとはいえ、昼間からワインを一杯楽しむ自然なスタイルがある。そういった“ちょっと一杯を楽しむ幸せ”を、美味しいワインといっしょに演出できればと思っていますよ」。老舗がいま、新たな船出を迎えたようだ。
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