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越後村上の伝統鮭料理 三面川の恵み「イヨボヤ」
「割烹 松浦家」の鮭料理コースには種々様々な手づくり珍味がズラリ! こちらで紹介しきれないのが残念!
越後村上の伝統鮭料理 三面川の恵み「イヨボヤ」
【 2008/12/25 】

新潟県最北の村上市は、日本海に注ぐ三面川(みおもてがわ)の鮭とともに生きてきた土地。鮭漁の歴史は古く、平安時代には京の都に献上されていたという記録が残っているほどだ。江戸時代以降、日本初の鮭の増殖や人工孵化などにも成功し、三面川に戻ってくる鮭は年々増加。秋から冬にかけて三面川を遡上する鮭は、1年を通して村上の人々の暮らしを支える食料となってくれた。そんな豊かな川の恵みを余すところなく味わう食文化が育った村上には、なんと100種類以上もの鮭料理が受け継がれているのだ! 創業150年の老舗「割烹 松浦家」で伝統鮭料理の真髄を味わった。



塩辛さの奥に深々とした苦みが広がる「めふん」。漬け込んで2年ほど経つといい塩梅になり旨味が増すそう。
塩辛さの奥に深々とした苦みが広がる「めふん」。漬け込んで2年ほど経つといい塩梅になり旨味が増すそう。
真っ黒の絵の具のような「めふん」は鮭の背わたの塩辛。鮭の頭の軟骨と大根おろしを和えた「氷頭なます」。鮭のほほ肉で作る「ほっぺたみそ」、鮭の身や内臓の入った「雅味煮」、胃と腸の塩辛「チュウ」、白子と肝臓の煮物「なわた煮」、生鮭で作る「焼き漬け」など、次々並べられる鮭料理は、どれも村上以外ではめったにお目にかかれない貴重な逸品。さらに、鮭の心臓を甘辛く煮た「どんびこ煮」、頭を丸ごと煮込んだ「スッポン煮」、生鮭を輪切りにして煮込んだ「川煮」など、数えきれないほどの鮭料理が迎えてくれた。鮭をすみずみまで食べ尽くす村上の食文化には、先人のたくましさを感じずにはいられない。

「塩引鮭」の腹を全部割いてしまわないのは、村上に武士が多く、切腹を連想させることを嫌ったからなのだとか。
「塩引鮭」の腹を全部割いてしまわないのは、村上に武士が多く、切腹を連想させることを嫌ったからなのだとか。
数多くの鮭料理の中で最もポピュラーなのが、「塩引鮭」だ。作りかたはこう。まず鮮度のよい雄鮭をまるごとよく洗って内臓を取り除く。キレイに取り除いたら、次にたっぷりの塩を手のひらですり込む。鮭の大きさや脂ののり具合によって、ちょうどよい塩の量はずいぶん違う。絶妙のタイミングで手を止めるには長年のカンが物を言うそうだ。そのまま4〜7日間ねかせて塩をなじませ、さらに今度は、たっぷりの水に半日ほど浸けて、塩を抜く。そしてようやく鮭の乾燥作業に。軒下などに逆さ吊りにして、3週間ほどじっくりと干されながら、鮭は村上の寒風を体に受けて「塩引鮭」へと熟成していく。「塩引鮭」が普通の「塩鮭」と違うのはここ! 塩引鮭は干されている間にアミノ酸発酵し、ゆっくり熟成が進み特別な旨味に変わる。この発酵は、日本海から北西の冷たい風が吹く、村上の独特な自然環境でしか起こらないそう。鮭の遡上する川は日本に数あれど、「塩引鮭」はまさしく村上だけの名物なのだ。

村上市はかつて村上藩の城下町として栄え、独自の文化を築いてきた。鮭や村上牛などおいしいものもいっぱい!
村上市はかつて村上藩の城下町として栄え、独自の文化を築いてきた。鮭や村上牛などおいしいものもいっぱい!
このあたりの年取り魚はもちろん塩引鮭。どこのうちでも1年間に食べる鮭は自宅で仕込むので、鮭が上る季節には、町中のいたるところに軒下に干された塩引鮭を見つけることができる。そうして丹誠込めて作った塩引鮭とともに、お正月を迎えるそうだ。お正月はもちろん、塩引鮭は毎日食べるものでもある。最近は食べやすい切り身にしてから冷凍しておけるようになったので、朝ごはんに、お弁当に、夕飯にと、年中無休で大活躍してくれる。松浦家で働くお母さんは「東京の大学に通う息子にもたっーぷり送ってやるの! 」と笑う。そんな笑顔を見ると、これぞふるさとの味! と太鼓判を押したくなってしまう。最高のごちそうを毎日食べられるなんて、なんて贅沢なんだろう。

地元では鮭を「イヨボヤ」と呼ぶ。「イヨ」も「ボヤ」も、どちらも「魚」を意味する言葉。つまり「魚の中の魚」というわけだ。村上では、「鮭」はまさに「魚の中の魚」! 最高の敬意を表した名前「イヨボヤ」が、人々にとって鮭がいかに大切かを物語っている。今も昔も、村上の暮らしは豊かな鮭たちに守られてきたのだ。

Recipe

たくさんの鮭料理の中から、家庭でも作りやすい「鮭の焼き漬け」をご紹介します。

鮭の焼き漬け

<材料> 4人分
  • 生鮭  4切れ
漬けダレ
  • 醤油  大さじ3
  • 酒   大さじ4
  • みりん 大さじ2
<作りかた>
  1. 生鮭は食べやすい大きさに切り、グリルで両面を香ばしく焼く。
  2. 漬けダレは小鍋で一度煮立たせて、冷ましておく。
  3. 漬けダレをバットなどに入れ、焼き上がったあつあつの鮭を漬ける。
  4. そのまま冷蔵庫などで漬け込めばできあがり。食べごろは1時間〜3日後くらい。
白ごはんにピッタリの「鮭の焼き漬け」! お好みで大根おろしを添えても美味。

Information

割烹 松浦家
割烹 松浦家
新潟県村上市寺町1-3
(JR羽越本線村上駅から徒歩15分)
TEL:0254-53-2015 FAX:0254-53-2055
営業時間:11:00〜15:00 17:00〜21:00
定休日:不定休

創業150年という落ち着いた雰囲気の割烹で、鮭料理や村上牛料理が味わえる。村上伝統の鮭料理フルコースは10〜12月までの3ヶ月間のみ。コース料理などは事前に予約するのが確実。

清 絢 清 絢(きよし あや)
郷土料理研究家、編集者。
日本各地を旅して出会った、その土地にまつわる食文化や暮らしをテーマに執筆中。

郷土料理研究・清風堂
http://shikumi.jp/seifudo

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