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日光修験者たちの耐寒食「志そまき とうがらし」
細かく刻んだら、ほかほかのごはんのおともにピッタリ。お漬物のように気軽に食べてもらいたい。
日光修験者たちの耐寒食「志そまき とうがらし」
【 2008/09/04 】

日本をはじめ世界各国からの観光客がひしめく日光に、隠れた名物「志そまき とうがらし」があるのをご存知だろうか。日光東照宮へ続く参道の中腹、一際歴史を感じる古い店構えが「志そまき とうがらし」を作っている落合商店。細長いとうがらしに紫蘇の葉をくるくる巻き付けて作られる「志そまき とうがらし」は、その300年(!)の伝統を静かに醸し出す由緒正しき食品だ。あらゆる製造工程をすべて手作業で行うという今どき珍しい正真正銘のスローフード。伝統の製法を今に伝える、落合商店を訪ねた。



江戸の真北に位置している日光。日光東照宮の陽明門の真上には本当に北極星が見えるというからスゴイ!
江戸の真北に位置している日光。日光東照宮の陽明門の真上には本当に北極星が見えるというからスゴイ!
日光といえば、日光東照宮。江戸幕府の初代将軍徳川家康を祀った絢爛豪華な社殿の数々が有名だ。ところが、東照宮ができる900年も前の奈良時代に、勝道上人というお坊さんがこの地に輪王寺を建てたことはあまり知られていない。輪王寺は険しい山々を敬い神と崇める「山岳信仰」の寺。輪王寺の近くには男体山があり、かなり古くから山岳信仰の聖地として信仰されてきた。山岳信仰はその後、天台宗などの密教とつながりを深め、独特な「修験道」へ発展。修験道の行者は、山に入り厳しい修業に耐えなければならなかった。そんな彼らが、長い冬を乗り越えるための耐寒食として食べるようになったのが、他ならぬ「志そまき とうがらし」なのだ。日持ちがする上に、体をあたためる効果があったので、寒い山中で過ごす修験者には心強い食べ物だったそうだ。

日光東照宮一帯の社寺は世界遺産に登録されていて、世界各国からの観光客が多いことでも有名。
日光東照宮一帯の社寺は世界遺産に登録されていて、世界各国からの観光客が多いことでも有名。
最初は修験者の滋養食品だった「志そまき とうがらし」も、日光東照宮ができ日光詣りが盛んになった江戸時代になると、日光みやげとして人気に。次第に一般の家庭でも食べられるようになり、江戸から明治にかけてはたくさんの志そまきとうがらし屋がこのあたりに軒をつらねていたとか。しかしながら、現在はすっかり作る店が減ってしまい、唯一残る落合商店が、伝統の味を受け継いでいるというワケだ。

一本まるごと衣を付けててんぷらにしたり、細かく刻んで小エビや野菜とかき揚げにするのもオススメ。
一本まるごと衣を付けててんぷらにしたり、細かく刻んで小エビや野菜とかき揚げにするのもオススメ。
「こうしてくるくるーって巻いていくのよ。」落合商店のお母さんが器用に紫蘇の葉を巻いて見せてくれた。材料のとうがらしは青色がベッコウ色になるまでじっくり塩漬けにし、大きめの紫蘇の葉も同じく塩漬けに。すっかり色が変わったところで、とうがらし一本一本に手作業で丁寧に紫蘇の葉を巻き付けていく。お店の中では、お母さんと数人の職人さんが黙々と作業されているのを見ることができる。何十年も毎日くり返された熟年の技なのだろう、紫蘇は寸分の狂いもなく見事に美しく巻かれていく。ついついお母さんのしなやかな指先に見入ってしまうほどだった。

「とうがらしに紫蘇」と聞くとかなり刺激的な味を想像してしまうが、食べてみると辛味は意外とまろやか。その理由は、とうがらしの種をすべて取り除いているからだとか。修験者の食べ物というから、食べるだけで修行になるような激辛味なのかも…、と少し尻込みしていたのでホッとした。食べ始めてみると、おにぎり、お茶漬け、パスタなど、アイデア次第でいろんな料理に活用できるなかなかの優れもの。私のオススメはチャーハン。細かく刻んで高菜チャーハンを作る要領で炒めるだけ。「志そまき とうがらし」の塩っけがうまい具合にごはんにも移り、少し醤油をたらすだけで、ちょうどいい味に。台所に常備しておけば、なにかと使える逸品だ。

Recipe

志そまきとうがらしチャーハン(2人分)

<材料>
  • 志そまきとうがらし 3本(細かく刻む)
  • 卵   2個(溶きほぐす)
  • しらす 50g
  • 長ネギ 10cm(みじん切り)
  • 白ゴマ 大さじ1
  • ごはん お茶碗2杯分
  • ごま油 大さじ1
  • 醤油  適宜
  • 胡椒  適宜
<作りかた>
  1. フライパンにごま油を熱し、しらすをカリッとなるまで炒める。
  2. 次に志そまきとうがらしを加え、強火でざっと炒める。
  3. ごはんをほぐして入れ、すぐに上から溶き卵を回しかける。
  4. ごはんがパラパラになるよう、フライパンに焼き付けながら炒める。
  5. 醤油を回し入れたら全体をざっとかき混ぜ味を馴染ませる。
  6. 長ネギと白ゴマを散らしてひと混ぜし、胡椒をふったら器に盛って完成。

Information

元祖志そまきとうがらし 落合商店
元祖志そまきとうがらし 落合商店
〒321-1403
栃木県日光市下鉢石町938 (東武・JR日光駅より徒歩約15分)
TEL:0288-54-2813
営業時間:9:00〜18:00 定休日:不定休(おもに水曜日)
URL:http://www.shisomaki.com/

清 絢 清 絢(きよし あや)
郷土料理研究家、編集者。
日本各地を旅して出会った、その土地にまつわる食文化や暮らしをテーマに執筆中。

郷土料理研究・清風堂
http://shikumi.jp/seifudo

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