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フランス料理の原点ここにあり。「キッシュ・ロレーヌ」
キッシュがフランス全土で食べられるようになったのはそんなに古い話ではなく、ここ100年くらいのこと。
フランス料理の原点ここにあり。「キッシュ・ロレーヌ」
【 2008/08/07 】

惣菜屋さんのショーケースにズラリと並ぶ数々のキッシュ。あれもこれもと目移りしつつ、その中から今日のひとつを選び出すのは何だか宝探しみたいで、フランスに行くたびに私が楽しみにしているイベントのひとつだ。「キッシュ・ロレーヌ」は、フランス北東部アルザス・ロレーヌ地方の伝統的な郷土料理。バリエーション豊かなキッシュの中にあって、基本中の基本といわれる料理だ。今回取材させていただいた長谷川イザベルさんは、お父様の故郷がアルザス地方ということもあって、幼い頃からキッシュ・ロレーヌ三昧だったとか。



アルザス・ロレーヌ地方は、ドイツに近く食文化にも影響が濃い。シュークルートやフォア・グラも有名だ。
アルザス・ロレーヌ地方は、ドイツに近く食文化にも影響が濃い。シュークルートやフォア・グラも有名だ。
 「サフェロントン! (久しぶり! )」

イザベルさんのほがらかな声とともにドアが開くと、部屋の中からなんとも芳しいバターの香りがふわ?っと漂ってきた。軽く挨拶を済ませいそいそと席に着くも、腹ぺこのお腹が『ぐぅ』と鳴りそうで、なんだかそわそわ落ち着かない。キッシュの焼き上がりが近づくにつれて、部屋に充満するよい香り。もはや心ここにあらずだが、気を取り直してお話を伺う。

 「キッシュはもともとロレーヌの食べ物だったけど、今ではフランス中で食べられている人気の家庭料理。どこのうちにもお母さんの得意な味があって、レシピも微妙に違うのよ。タマネギを入れる家もあれば、ほうれん草を入れる家もあるわ。もちろん私の家でも昔から食べてきたけど、うちのはとってもシンプルで、まさにキッシュ・ロレーヌ。卵に牛乳、生クリーム、ベーコン。チーズは堅めのグリエールやコンテ、エメンタールもいいわね。」

なるほど、今やキッシュはフランスの国民食なのだ。

焼き立てのキッシュはまるで卵たっぷりのプリンのよう! ほんのり焼き色のついた最高の焼き上がりだ。
焼き立てのキッシュはまるで卵たっぷりのプリンのよう! ほんのり焼き色のついた最高の焼き上がりだ。
そうこうしているうちにオーブンから顔を出した、まんまるのキッシュ・ロレーヌ。慣れた手つきで切り分けられた焼き立てのキッシュは、ちょこんと私の前に。はやる気持ちを抑えられず、早速頬張ってみる。おどろいた。口の中でふわっととろけるようにやわらかく、それでいてしっかりとした食べごたえ。卵の濃厚でやさしい味わいと、ほんのり利いたベーコンの塩味は、これぞフランスのママンの味だ。

 「作るときのポイントは、ベーコンを底に敷くように置いて、アパレイユ(流し込む卵液)をそっと流し入れることかしら。そうしたら切ったときにベーコンが層になって、見た目にもキレイでしょ。あとは、アパレイユに片栗粉を少し混ぜること。そうすれば、ちょうどよく生地が固まって、失敗しないわ。」
映画「アメリ」にも登場したベルガモットキャンディは、ロレーヌ地方の都市・ナンシーの名物みやげ!
映画「アメリ」にも登場したベルガモットキャンディは、ロレーヌ地方の都市・ナンシーの名物みやげ!

そうか、シンプルだからこそ、そういう小さな心遣いが生きてくる。どこのうちにもある材料で、簡単に作れるキッシュ。数々の美食が満載のフランスでもメキメキ頭角を現し、地方の郷土料理からフランスを代表する家庭料理のトップに躍り出たのだ。

 「こんなに食べられるかな? 」

などと余計な心配をしていたが、おいしいものの前では人間、正直である。キッシュはあっという間に売りきれごめん。結局1/2ホールほどいただいてしまった...。

おいしいドレッシングの強い味方ディジョン・マスタード! 左からマイユの種入り、カシス、スミレの花。
おいしいドレッシングの強い味方ディジョン・マスタード! 左からマイユの種入り、カシス、スミレの花。
 「パートブリーゼ(キッシュの土台になるパイ生地)は、一度にたくさん作って、冷凍しておけばいいわ。日本の人たちはオーブン料理は手間がかかると思いがちだけど、時間があるときに作り置きしておけば、あとは食べたいときに中身を入れて焼くだけ。とっても手軽で、すごーく便利なのよ。」

バターたっぷりでサクサクのパートブリーゼは、キッシュ・ロレーヌをはじめ各種キッシュだけでなく、クリームチーズを入れてチーズケーキに、トマトとハーブを使ってピザ風に、といろいろ作れる優れものなのだ。フランス料理と聞くと、なんだかきらびやかで高級な感じだが、いやいや、どこの国でも根っこにはお母さんの作る家庭料理がある。キッシュ・ロレーヌでフランス料理はじめの一歩を踏み出してみませんか?

Recipe

キッシュ・ロレーヌ(4人分・直径210mmのタルト型)

<材料>
パートブリーゼ(パイ生地)
  • 小麦粉 300g(ふるっておく)
  • バター 100g(5mm角に切る)
  • 水   1/2カップ
  • 卵   1個(割り溶いておく)
  • 塩   少々
アパレイユ(流し込む卵液)
  • 牛乳    400〜500cc
  • 生クリーム 200ml
  • 卵     3〜4個
  • 片栗粉   大さじ1
  • 塩コショウ 適宜
  • ベーコン  150g(1cm幅に切る)
  • 粉チーズ  大さじ2
<作りかた>
  1. 大きなボウルに小麦粉を入れ、まずバターを加えて木べらで切るように混ぜる。
  2. 次に卵、水、塩を少しづつ加えて、ざっざっと切るように、全体がまとまるまで混ぜる。
  3. ラップに包み、冷蔵庫で1時間?半日くらい寝かした後、めん棒でのばす。
  4. タルト型にきっちりと敷きつめ、フォークで穴を開け、200℃のオーブンで7分くらい焼く。
  5. 焼いている間に、常温にした卵、牛乳、生クリーム、片栗粉、塩コショウをよく混ぜて、アパレイユを作っておく。
  6. パートブリゼが焼けたら、底にベーコンを敷き詰め、アパレイユをそっと流し込む。
  7. 表面に粉チーズをまんべんなく振りかけ、200℃のオーブンで30分くらい焼く。
  8. いい色に焼けたら完成。(焼き時間はご自宅のオーブンに合わせて調整してください。)

Profile

長谷川イザベル 長谷川イザベル
フランス・アルザス地方出身。画家。日本人の旦那様との結婚・出産をきっかけに来日。上智大学外国語学部フランス語学科教授を今春退職、現在は画業に専念。最近は個展に向けて作品を描く日々。主要著書「フランス式結婚・日本式結婚−しあわせの追求のしかた」「フランス語・はじめの一歩まえ」「共和国の女たち」など。

「Bella イザベル・ハセガワ展 --フランスの人と風景--」
日程:2008年10月30日(木) 〜 11月4日(火)
日程:11:00 〜 18:00(最終日〜16:00)
会場:Art Space88 KUNITACHI
〒186-0004 東京都国立市中1-9-66(JR国立駅から徒歩2分)
TEL:042-577-2011

清 絢 清 絢(きよし あや)
郷土料理研究家、編集者。
日本各地を旅して出会った、その土地にまつわる食文化や暮らしをテーマに執筆中。

郷土料理研究・清風堂
http://shikumi.jp/seifudo

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