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実はウクライナ料理だった!?「ボルシチ」
もうもうと立ち上る湯気が期待を膨らませる! 温かいボルシチだが、夏には冷やして食べることもあるそう。
実はウクライナ料理だった!?「ボルシチ」
【 2008/07/03 】

真っ赤なスープが印象的な「ボルシチ」。どこのロシア料理店でも必ずメニューに並んでいるロシアで一番有名な定番料理だ。ブイヤベース、トムヤムクンとともに、世界三大スープのひとつにも数えられているほど。しかし、「ボルシチはウクライナ料理だよ。」という友人の一言に「なぬっ!?」と疑念を持った私は、早速調査開始! その真相を探るべく、調べて調べて、そして食べてまいりました。ボルシチの真実、ここに公開。



南に黒海が広がる豊かなウクライナ。昔はソビエト連邦の一部でもあり「小ロシア」と呼ばれていた時代も。
南に黒海が広がる豊かなウクライナ。昔はソビエト連邦の一部でもあり「小ロシア」と呼ばれていた時代も。
ウクライナ料理疑惑をもったボルシチだが、いくつかの文献を調べてみると、その発祥は本当にウクライナだったようだ。寒さの厳しいロシアに比べ、ウクライナは国土のほとんどが肥沃な平原で、古くから穀倉地帯が広がり美味しい食べ物の宝庫だった。そんなウクライナの郷土料理・ボルシチがロシアに伝わったのは19世紀前後。豊かなウクライナに憧れを抱いていた人々の間で、自然と家庭料理として定着。火にかけているあいだ、暖をとれる煮込み料理だったこともロシアで受け入れられやすい要因だった。日本の味噌汁のように、中に入れる具を選ばないボルシチは、各家庭で自由にアレンジされて食べられている。数々の野菜やスパイスを加えて作るのがウクライナ風だとしたら、ロシアでは、ハムやソーセージなどの加工肉を入れたモスクワ風、大きな具材を大胆に煮込むシベリア風などが生まれた。どんなレシピでも、これだけはハズせないという材料が「ビーツ(テーブルビート)」。真っ赤な色素でスープを染め上げ、ボルシチへといざなう食材が、このビーツだ。昔、ウクライナでは「ボルシチ」はビーツそのものを指す言葉だったというから、その重要さがうかがえる。

疑問が解決したところで、さっそく今回もボルシチを食べにゆこう。

ボルシチに欠かせないロシアのクリーム「スメターナ」。日本のサワークリームをもっとマイルドにした感じ。
ボルシチに欠かせないロシアのクリーム「スメターナ」。日本のサワークリームをもっとマイルドにした感じ。
さて、お邪魔した「手作りの店 ソーニヤ」は大田区で40年近くお店を続けた後、2002年こちらの小石川に移転し再オープン。真っ赤なテーブルクロス、ロシア製の木のスプーンやコーヒーカップなど、細かいところまで雰囲気ムンムンのロシア料理店だ。

ボルシチの、このふかぶかとしたレンガ色の美しさはどうだろう。スメターナ(ロシア風クリーム)の白とのきっぱりとしたコントラストに思わずドキッとする。できたてグツグツのボルシチは、ゴロッと大きな牛肉がホロッとくずれ、ビーツやジャガイモもすっかり柔らかく素直に。あっさりめでほっこり体にしみわたるスープは、なんともやさしい口当り。
生クリームとイチゴジャムをつけて食べる、ロシアのドーナツ「アラジ」! お母さん手作りの素朴なおやつ。
生クリームとイチゴジャムをつけて食べる、ロシアのドーナツ「アラジ」! お母さん手作りの素朴なおやつ。
今まで食べていたボルシチとは全然違う! ついつい唸ってしまう。スメターナを混ぜながらいただくと、爽やかでコクのある旨味が広がり、いっそうふくよかな味に。

こちらのボルシチは、仕込みから完成までまるまる3日間を費やすという、ひとつひとつ手作りの逸品。太平洋戦争終戦直後、ソーニヤ創業者が満州から日本へ帰ることができずにいたとき、ちょうどロシアから亡命してきた貴族の一家とともに中国のハルピンで暮らすことになったそう。そこで生活した8年間のなかで、直接手ほどきを受けて学んだのがソーニヤのボルシチなのだ。ここまでロシアの家庭に馴染んでいるなら、もうウクライナでもロシアでも、どちらの料理と言ってもいいのかもしれないな。

Recipe

ボルシチ(4人分)

<材料>
  • 牛肉(カレー用)500g
  • タマネギ    1/2個
  • ニンジン    1本
  • セロリ     1/2本
  • ジャガイモ   2個
  • キャベツ    1/4個
  • ビーツ缶詰   150g
  • ブイヨン    1000cc
  • トマトピューレ 1/2カップ
  • ニンニク    2片(薄くスライス)
  • バター     大さじ2
  • ローリエ    1枚
  • 塩コショウ   適宜
  • ディル     適宜
  • サワークリーム 適宜
<作りかた>
  1. 肉と野菜を食べやすい大きさに切る。
  2. 鍋にバターを溶かし、ニンニクを炒めて香りを出したら、牛肉を加え炒める。
  3. 肉の色が変わったら、タマネギ、ニンジン、セロリ、ビーツの順に入れて炒める。
  4. 野菜に火が通ったら、ブイヨン、トマトピューレ、ジャガイモ、キャベツ、ローリエを入れて強火にする。
  5. 沸騰したら弱火にし、アクを取りながら20分ほど煮込む。
  6. 最後に塩コショウで味を調える。
  7. 器に盛りつけ、ディルを散らし、サワークリームを乗せたら完成。
スープと野菜が渾然一体となった翌日のボルシチもまた美味! スメターナを再現するなら、水を切ったプレーンヨーグルトと生クリームを1:1で混ぜて、レモンを少し搾ると近い味になりますよ。

Information

手作りの店 ソーニヤ
手作りの店 ソーニヤ
〒112-0002 東京都文京区小石川5-31-6 文京パークハイツ1F
(東京メトロ丸ノ内線茗荷谷駅1番出口より徒歩8分)
TEL:03-3816-0144
営業時間:12:00〜21:00
定休日:毎週木曜日

素材までこだわり抜いた手作りのロシア料理が味わえるお店。牛挽肉やカボチャ、ブルーベリーなどいろいろな種類があるピロシキや、丁寧に煮込まれた牛タン、生クリームたっぷりのロシアコーヒーもオススメ!

*今回のコラムでは、ボルシチはウクライナ料理として紹介させていただきましたが、「手作りの店 ソーニヤ」はロシア料理店です。

清 絢 清 絢(きよし あや)
郷土料理研究家、編集者。
日本各地を旅して出会った、その土地にまつわる食文化や暮らしをテーマに執筆中。

郷土料理研究・清風堂
http://shikumi.jp/seifudo

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